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無菌で育てた魚は売れない!? 養殖ニジマスのリアルな裏側

はじめに:ニジマスってどんな魚?

ニジマスは、渓流釣りや管理釣り場でよく知られている魚で、肉質もよく、食用としても人気があります。お寿司屋さんによくある「トラウトサーモン」などという名前のお寿司、実はあれニジマスです。気づかないだけで結構身近で売られているんです。

私たちが食卓や釣り場で出会うこのニジマスは、自然ではなく養殖場で育てられたものです。

 

養殖の現場から:一番の敵は「病気」

マス養殖業にとって、最大のリスクのひとつが「病気」です。

大雨や洪水、気候変動など自然の影響もリスクの一つですが、実は一番損害が出るのは病気が発生した時です。

病気の発生自体が水温によるものや、大雨によって泥水が入り込んだ場合に発生することも多いため、自然環境と魚病は切っても切り離せない関係でもあります。

水中で生活する魚にとって、病原菌は瞬く間に広がり、数日で多くの魚を失います。

最悪の場合は全滅といった壊滅的なダメージになることもあります。

「じゃあどこから病気がやってくるの?」と疑問に思うかもしれませんが、人間が風を引いたり、病気になって体調が悪くなるのと同じです。

魚も生き物なので、風を引きます。病気になります。

その病気(ウイルスや細菌)はどこにいるのか?それは自然にいます。ウイルスや細菌は、どこにでもいます。何度も言いますが、人間が風を引くのと同じ。

人間が一度も風を引かず、病気にもならず一生を終える方が逆に不自然ですよね?

それと同じです。

 

ワクチンや薬を使うこともありますが、すべての病気に対応できるわけではなく、予防と早期対応が鍵となります。

※魚の病気と聞くと「食べて大丈夫なの?」と心配される方もいるかもしれませんが、魚の病気は人間には感染しません。病気の魚がいたとしても、しっかりとした選別や処理がされており、私たちの健康には全く影響ありませんのでご安心ください。

 

「無菌」で育てればいい? それが落とし穴

「それなら最初から無菌状態で育てれば病気にならないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、実際にはそれが“落とし穴”になることがあります。

無菌に近い環境で育った魚は、外部の環境に対する免疫が弱く、いざ出荷された先で環境が変わると、すぐに病気にかかってしまうんです。

特に、生きたまま販売される魚(管理釣り場や養殖業者、海面用種苗、観賞用など)は、移送先で病気が出るとクレームが来ることも。

※丈夫で健康な魚でも、移送先の環境が悪いために病気になってしまうケースもまれにありますが...…あまり細かく書くときりがなくなるので、またの機会に記事にします。

どれだけ見た目がきれいでも、「すぐ病気になる魚」は市場価値がありません。

 

「無菌で育てたから安全!」って一見よさそうに聞こえますよね。

実際には社会に出したら弱すぎて通用しない…というまさに温室育ちの話です。

 

使い道で変わる育て方

一方で、加工用や食用として販売される魚は、環境の変化を受けないまま処理されるため、無菌環境で育てても問題にならないことが多いです。

だからこそ、「誰にどのように売るか」を考えた上で、育て方を考える必要があります。

 

本当の意味で“強い魚”とは?

本当に価値のある魚は、見た目がきれいで大きいだけでなく、「健康で環境への適応力がある魚」です。

ある程度の菌や自然の変化に耐えながら、丈夫に育った魚は、生きたまま売られても環境変化に負けず、高い評価を得ることができます。

それを実現するには、過保護すぎず、放任すぎない“ちょうどいい管理”が必要。

これこそが養殖業者としての腕の見せどころです。

 

病気になると損害が出てしまうけど、病気をクリアしていない魚は売れない...…

ほんとにややこしいジレンマなんですが、それがこのマス養殖の特徴でもあり、簡単にマネできない参入障壁でもあります。

 

おそらく多くの人が、養殖なんて単純に魚にエサをあげて、成長させて売る・・・という簡単な仕事だと思っているかもしれません。

実際釣り場にお越しのお客様と話をしていると、そのような考えの方がほとんどという印象を受けます。

現実は、けっこう神経使う仕事です。

エサやりなんてほんの一部の作業でしかなく、ほとんどはかなり泥臭い作業ばかりです。

今回この記事を読んで、”マス養殖の現実”に対して少しでも理解を深めていただければ、管理釣り場で魚を釣るときに、一尾一尾の価値をより強く感じていただけるのではないでしょうか。

 

まとめ:知られざるニジマス養殖のリアル

養殖というと単なる「魚を育てる仕事」と思われがちですが、実際は自然と向き合い、生き物の命を預かる繊細な仕事です。

病気のリスク、出荷先のニーズ、そして魚自身の生命力。

そのすべてをバランスよく見ながら育てることが求められます。

「無菌=安全」とは限らない。

そんな奥深い世界が、ニジマス養殖にはあるのです。