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閉鎖循環式によるギンザケやトラウトサーモン養殖。
閉鎖循環式は、同じ水を浄化・循環して繰り返し使い、魚介類を養殖する方法のことです。
サケマス養殖業界では、昔から代々続いていた中小零細養殖業者が、後継者不足や自然災害、飼料価格の高騰など、様々な影響で廃業や倒産が増えているなか、ここ数年の間で大企業や資金力のある会社の参入が相次いでいます。
なぜ大企業の参入が増えているのか?
水産物の世界的需要が、過去数十年間ずっと右肩上がりに増え続けていることが一番の理由です。
大企業はその企業体質ゆえ資金力があります。大規模に生産することで、中小企業にはマネできない設備投資を行うことができ、うまくいけば安定的な生産ができ効率的な運営が可能になることが挙げられます。
閉鎖循環式養殖のメリット
・常時水質管理ができる
・生産場所が限定されないため、流通させやすい
・排水をほとんど出さないため環境負荷が少ない
デメリット
・初期投資と維持コストがかかりすぎる
・採算が合わない(赤字である)
メリット、デメリットを簡単にまとめる上記のようになります。
閉鎖循環式の一番の謎。
初期投資と維持費がかかりすぎて商業ベースに乗らない。つまり赤字であるということです。
果たしてこれで継続できるのか、その赤字分をどこから補填して運営していくのか、という疑問があります。大企業は資金力があるとはいえ、マイナスになる事業をいつまでも継続していくとは考えにくいです。
国や自治体から毎年のように補助金や助成金が出れば話は別ですが…。
これまで閉鎖循環式陸上養殖で採算ベースまで乗せて運営している会社を知りませんし、おそらく無いでしょう。
大企業とはいえこれまで養殖経験のない会社が新規参入し、養魚のノウハウがない状態で果たしてうまくいくのかという疑問もあります。
大手水産会社の養魚部門の担当社員でさえ、ギンザケ、トラウトの病気の名前、対処法などを知らない人が大勢いるというのが現状です。
また、万が一施設内で魚病が発生した場合、閉鎖循環式のようにずっと無菌状態で育てている魚は、経験上ほぼ全滅します。
採算が合う規模まで拡大するためには、2000トン以上の生産が必要ということだそうですが、それほどの設備投資をして、エサ代、電気代、人件費など様々な維持費を支払いながら、一体何十年、何百年かけて投資分を回収するのか?
閉鎖循環式のメリットの一つである、排水をほとんど出さないということに関しては、バクテリアを使って魚の糞を分解する技術がカギとなりますが、2000トンの魚を生産するということは、2000トンの飼料が必要ということです。
魚が体内で消化する飼料分を考えても、2000トンのエサを魚が消化して排出するだけの糞を、バクテリアが分解できるのか?という謎もあります。
投資分は計算に入れずに、補助金や助成金という形でただ税金を使うのか…具体的な計画まではわかりませんが、閉鎖循環式は非常に謎の多い養殖方法です。
安全、安心、安定、海洋保全、環境配慮、こういった言葉の聞こえは良いですが、生き物を育てることは、機械や部品を工場で生産することとは全く違います。想定外の事態が起こるということが日常茶飯事です。
これから大企業のトラウトサーモン生産がどのように発展していくのか、閉鎖循環式陸上養殖という環境に配慮した生産方法が今後どのように発展していくのか、注視していきたいと思います。
もう少し深掘りした内容↓