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リバレンススチールヘッドの普及状況

(※このページは2022年1月27日に更新されました)

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現状では管理釣り場への普及はだいぶ進んできており、東北~関東エリアではすでに放流している釣り場もあります。北海道でも養殖が始まっているそうです。

リバレンススチールはこれまでのトラウトと比べ物にならないほど成長スピードが速く給餌効率の良い魚です。

 

しかし、実はこのスチールヘッドには唯一の欠点があります。

それは、IHNに感染していないということです。

IHNとは「伝染性造血器壊死症」のこと。

サケマス類にみられるウイルス感染症の一つで、1970年代からずっと養殖業者を悩ませている魚病の一つです。IHNに感染しても必ず死ぬわけではなく、症状が何も出ずにそのまま抗体を持つこともあります。サケマス魚病の被害の中では、IHNは最も被害の大きい魚病です。

通常、ニジマスはIHNに感染しており抗体をもっているということが前提で取引されます。

弊社ではリバレンススチールヘッドがIHNに感染していない(養殖場では感染して死亡するリスクがある)ということを知っていたうえで試験的に養殖を始めたわけです。弊社のリバレンススチールヘッドは今現在もIHNの被害は出ておらず、元気に泳いでいます。

 

しかし、某養殖業者からの報告では、リバレンススチールヘッドがIHNを発症してバタバタと死んで数が減っている。ということもあり、IHNは魚体が大きくなってからも発症することがあるため、この魚病を発症した場合に被害額が非常に大きくなってしまうというのが最も大きなリスクなのです。

マスの魚病死亡率が一番高くなる状況というのは、冷水病とIHNを同時に発症してしまった場合です。

こうなった場合はエサを止めてバタバタと死んでいくのを収まるまで待つか、あるいは一定数必ず死ぬこと覚悟で薬を与えるかしかありません。

ですが、河川水を利用している養殖場では水温に差が出るため、このウイルスが自然終息するタイミングがあります。IHNであれば水温18℃になれば基本的に止まるといわれています。しかし高水温になりすぎても、鰓病などといったほかの魚病が発生するため水温は十分に注意が必要なのです。

 

 ここまでの話でウイルス感染症と言ったので、なんとなく怖いイメージを持った人もいると思いますが、人間の体には全く影響ありませんのでご安心ください。もちろん食べても何も問題ありません。また、例えば釣り場に放流した後にタイミングよくIHNに感染したとしても発症する前に釣られてしまうのでこれも全く問題ありません。

 

 以前の記事で書いたように、リバレンススチールヘッドは優秀な血筋の掛け合わせを繰り返したスチールヘッドですので、引きが強く釣り人を楽しませてくれる魚であることは間違いありません。

以前の記事
troutland.work

 

しかし、養殖業者にとってはIHNに感染していないトラウトを養殖するというのは、実はかなりのリスクなのです。たいていの魚病は稚魚の時が最も発生しやすいですが、魚が大きくなるにしたがって病気の発生は減少する傾向があります。ですがIHNという病気の場合は、魚が大型に成長しても発病するリスクが十分あります。

つまり、リバレンススチールヘッドを養殖するということは、早いスピードで良い魚が成長できることと引き換えに、魚がほぼ全滅するリスクをとっているというわけです。

 

 

 

このリバレンススチールヘッドは大手水産会社が海水面での養殖のために大量生産を予定しておりますが、その場合は海に出す大きさに育てるまで陸上で養殖する必要があり、現状では養殖池もこれまでIHNが出ていない池を選ばなければならないという難しい課題があります。

日本全国に釣り場放流用の魚としてリバレンススチールヘッドが今後普及するかどうかも正直なところ不透明です。

これからこの魚がどのような方向に動くかわかりませんが、弊社では今後も観察を続けつつ、大きく成長させていきます。

リバレンススチールヘッドについてはまた新しい情報がわかり次第まとめて書きます。