トラウトらんど公式サイト

トラウトらんどのお知らせ、トラウト釣り情報も載せてます

管理釣り場でたまに聞く「IHN」って何?

管理釣り場に通っていて、「IHN(アイエイチエヌ)」という言葉を聞いたことがある人はいますか?
養魚関係者がよく口にする言葉ですが、
実は、管理釣り場を長年運営している経営者でも知らない人が多い、かなりマニアックな言葉です。
サケマス養殖の業界ではこの魚病を知らない人はいませんが、養魚と管理釣り場経営は全く別物です。

釣り人が「IHN」という言葉を知っているだけで、「お?この人なかなか詳しいな!?」という印象を持たれると思います。

もしかすると、どこかで聞いたことがある釣り人もいるかもしれませんが、でも正直、「IHNって結局なに?」と思っている人も多いはずです。

今回は、できるだけ分かりやすくIHNの話をしてみます。

IHNは、ニジマスやヤマメなどサケ科の魚がかかるウイルス病」です。
アルファベットが3個並んでいて、覚えにくい感じですが、日本語で「伝染性造血器壊死症」と言います。

1970年代からずっと養殖業者を悩ませている魚病の一つです。
サケマス魚病の被害の中では、IHNは最も被害の大きい魚病です。
魚がIHNに感染しても必ず死ぬわけではなく、症状が何も出ずにそのまま抗体を持つこともあります。

病気と聞くと怖いイメージがありますが、
人にはうつりません。
釣りをしていて触っても、食べても問題ありません。
でも魚にとってはかなり厄介な病気です。
特に怖いのは、稚魚が一気に大量死してしまうことがあること。
魚が、短期間で全滅するケースもあります。

昔は「小さい魚だけがかかる病気」と言われていましたが、最近では大きく育った魚、大型魚でも発症する例が増えています。
「え、このサイズでも?」と養殖現場で驚かれることも、実際にあります。

 

見た目で分かるのか?
正直言うと、釣り人が見た目だけで判断するのは、ほぼ無理です。
ただ、以下ような症状が見て取れる場合があります。
・動きが鈍い(ふらふら泳ぐ)
・体が黒ずむ
・腹側やエラ下部分に内出血のような見た目、あるいは肝臓の色の異常(赤くなく、ピンクっぽい)
・目玉が飛び出す
・エラが白っぽくなる など

ですが、これらは他の病気や水温のストレスなどでも起こる症状です。
「この魚は、IHNだ」とその場で断定することはできません。

 

IHNは日本生まれじゃない
IHNは、もともと海外(北米)にあった病気です。
1970年代、ニジマスの卵を海外から輸入していた時代、卵と一緒にウイルスが日本に入ってきた、と考えられています。

最初は北海道、その後、長野や静岡といった、ニジマス養殖が盛んな地域で広がりました。
そこから全国に広がり、今では「完全に身近な病気」になっています。

 

IHNにも「種類(系統)」がある
ちょっとだけ専門っぽい話ですが、IHNのウイルスにもいくつかの系統(タイプ)があります。
この例えが合っているかわかりませんが、人間の身近な病気で例えれば、インフルエンザやコロナウイルスの株の違い、みたいな感じです。
日本では主に、静岡で多かったタイプ、長野で多かったタイプ、北関東で見つかった新しいタイプ、といった地域ごとの系統が確認されています。

時代とともに「よく見つかるウイルスのタイプ」が入れ替わっていて、最近は昔とは違う系統が主流になっています。

ウイルスも生き残るために、少しずつ姿を変えている、という感じです。

 

強いウイルス・弱いウイルスがいる?

IHNのやっかいなところは、どれくらい死ぬか読めないこと。
一気に発症、短期間で大量死することもあれば、あまり死なないこともある。
ほぼ死なずにクリアする場合もある。
これはIHNの発症する前に、タイミング良く水温が適正(一般的には18度以上で止まるとされている)になったためなのか、継代を繰り返すことでIHNに強くなったためなのか、あるいはそれ以外の要因が何かあるのか、因果関係を考えればきりがありません。

一気に発症する場合は、稚魚期でも大型魚でも、全滅する場合もあります。
こうなったら、もう手の付けようがありません。
食用として魚を卸している養魚場であれば、弱っている時点で加工会社へ出荷できる場合もありますが、稚魚の時点で大量死した場合はどうしようもありません。

 

IHNをクリアしていない魚は流通できない?
「IHNにかかると大変だから、そもそも感染しないように対策したらいいのでは?」と思う人もいるかもしれません。
ですが通常、ニジマスはIHNに感染しており、抗体をもっているということが前提で取引されます
食用の場合は、IHNにかかっていても、かからなくても、規格サイズになれば出荷するだけですのであまり関係ありません。
しかし管理釣り場では、ひとつの養魚場だけでなく、複数の養魚場から魚を仕入れて放流しているケースが多いです。
飼育環境や水系、その魚の魚病耐性がそれぞれ異なります。
そのため、IHNを完全にコントロールすることは現実的に難しいのが実情です。
また、管理釣り場では、魚をリリースして何度も釣ってもらうため、複数の養魚場から仕入れた魚を、長期間一つの池に入れることになります。

もしIHNの抗体を持っていない魚と、IHNの抗体を持っている魚を混ぜた場合、抗体のない魚は感染し、経験則ですが、早ければ2週間前後で死に始めます。
こうした背景から、多くの管理釣り場では、IHNをクリアした魚を仕入れるというのが一般的になっています。

 

養魚場でIHNが出て死に始めた場合の対処
エサを止め収まるまで待つか、一定数死ぬことを覚悟で薬を与えるかしかありません。
ですが、河川水を利用している養殖場では水温に差が出るため、このウイルスが自然終息するタイミングがあります。
IHNは、水温18℃以上になれば基本的に止まるといわれています。
一時的に水温が上がっただけではだめで、水温が上下繰り返しながら1か月以上かかる場合もあれば、2週間ほどで落ち着く場合もあります。

養殖業者にとっては、IHNに感染していないトラウトを仕入れて養殖するというのは、実はかなりのリスクです。
たいていの魚病は稚魚の時が最も発生しやすいですが、魚が大きくなるにしたがって病気の発生は減少する傾向があります。
ですが近年のIHNは、魚が大型に成長しても発病する場合があります。

無菌環境(ウイルスフリー)の養魚場で育てた魚を仕入れ、すでに病気をクリアしている魚の池に混ぜた場合や、同じ水を使っている場合など、特に注意が必要です。

無菌環境(例えば水産試験場など)で育てた魚を、IHNが必ず出る養魚場の池に入れた場合や、IHNをクリアした魚と無菌環境で育てた魚を混ぜた場合、こういった場合もやはり、早ければ2週間前後で、無菌環境で育てた魚は死に始めます。
いつその斃死がいつ終息するかはわかりません。
水温18度以上で終息する場合もあれば、止まらず全滅する場合もあります。
水温が18度以下でも時間が経てば落ち着いてくる場合もあります。

つまり、どうなるかわからない

だから安定供給が非常に難しい。

管理釣り場という場所はその性質上、さまざまな養魚場の魚が集まるため、IHNのリスクを完全に排除することは簡単ではありません。
だからこそ、IHNをクリアした魚を仕入れることが、魚の健康を守り、釣り場全体の安定した運営を続けるために必要なことです。

あまり表にでない内容ではありますが、こうした積み重ねが、安心して釣りを楽しめる環境につながっています。