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鹿や猪が魚のエサになる日は来るのか?

 有害駆除から養殖飼料へ、資源の循環はできないのか?

 養魚飼料高騰問題

近年、ニジマスやブリ、タイなどの養殖業界では、飼料価格の高騰が深刻な問題になっています。背景には、輸入魚粉価格の上昇、物流コスト、円安、さらには世界的な需要の拡大などがあり、特に中小規模の養殖業者にとっては経営を圧迫する大きな要因となっています。

そこで、余っている栄養資源を飼料に活かせないか?という視点から、実際に実現できるか、何か問題はあるのかなどを考えてみました。

 

有害獣を有効資源へ

山間部や中山間地域では、イノシシやシカによる獣害が深刻化しています。農作物や森林への被害、人身事故、そして耕作放棄地の拡大にも拍車をかける存在です。

毎年、数十万頭規模の野生鳥獣が「駆除」されているのが日本の現実。その多くは、焼却・埋設処分され、命が無駄にされている状況です。

ならば、「駆除された命を魚のエサに」できないのか?

鹿肉は高タンパク・低脂肪。猪は脂質もあり栄養バランスが良い。

飼料原料に加工すれば、魚の成長にも十分使えるはず。

地域の“困っている資源”を“足りていない資源”へと転換できます。(理論上は)

実際、ペットフードや肥料としては、すでにジビエ由来の原料利用が始まっています。

 

飼料化できない壁・問題点

 ・衛生管理の壁

駆除個体は「食品」として処理されていないため、病原菌や寄生虫のリスクがあります。また、魚のエサにするには、加熱滅菌・乾燥・粉砕などの適切な処理が必要となります。

・法律の壁

日本では、「飼料安全法」によって、動物性原料は厳しく規制されています。
特に「有害駆除された野生獣」は食品でも飼料でもない“グレーゾーン”にあるため、活用には「飼料製造業」の登録はもちろん、その他特別な許可が必要です。
また、適切な処理施設(登録加工施設、動物副産物処理施設)が必要で、これが全国にまだまだ少ないのが現状です。※一般の食肉加工場では許可されていないため、加工施設の整備が必要。

・ コストの壁

加工には人件費、設備投資など手間も費用もかかります。1頭1頭の個体差も大きく、安定した品質・供給量の確保も難しい課題です。

・法的責任

万が一、魚に何かしらの問題が出た場合は誰が責任をとるのか。もし病原菌や寄生虫が問題となったら、出荷停止措置や回収命令のリスクもあります。その場合、施設の設備投資や人件費などどうするのか?資源活用どころの話ではなくなり、養殖業界に大損害を与えかねない、といったリスクも考えられます。


法律の壁があるため実現は難しいというのが現状

とはいえ、資源の有効活用という点では考える価値があると思っています。当然こういった活用によって飼料価格が抑えられるという前提ですが。かえって経費がかかり高上りになるならやらないほうがいいわけです。

日本の飼料魚粉はほぼ海外輸入に依存しているのが実情です。特にペルー沖のカタクチイワシが大部分を占めています。気候変動や為替の影響も大きく関係しているため、価格変動が大きくなってしまう年もあります。こういったリスクを少しでも減らすためにも、これまで無駄に廃棄していた山の資源を有効に活用していくことを考えるのは必要だと思います。

 

まとめ:命を無駄にしない社会へ

魚のエサが足りない。山では命が余っている。
だったら、つなげればいいのではないか。そんなシンプルな発想でしたが、法律・衛生・コスト・責任などの壁があります。ですが「有害」か「資源」かは、人間の使い方次第だと思います。

この記事は釣り場の運営と養殖、有害駆除に携わる中で、「駆除された鹿や猪をなんとか活かせないか?」と思ったことがきっかけで書きました。

“もったいない”で終わらせず、命を活かす選択肢が必要であると思います。