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採算度外視?なぜ大企業は「閉鎖循環式養殖」に次々と参入するのか

ここ数年、水産業界で急速に注目を集めているのが「閉鎖循環式養殖」。
水を外部に排出せず、ろ過・消毒・再利用を繰り返し、陸上で魚を育てる養殖方法です。

環境負荷が低く、都市型・工場型にも対応できるとされ、未来の養殖モデルと期待されています。

 

現実は?

ですが、実際現場で長年魚を育てている中小企業の声は…

ランニングコストが高すぎて、到底利益が出ない」

補助金がなければ成り立たない」

「大企業の実験場に過ぎない」

そんな実態が見え隠れしています。

それでもなぜ、次々と大企業が参入しているのでしょうか?

 

採算性は「現時点では」ない。その理由とは?

閉鎖循環式は、従来の養殖・流水式に比べて圧倒的にコストが高い。

具体的には↓

・初期投資:数億円規模の設備導入(建屋、水処理、酸素供給、温度管理など)

ランニングコスト:24時間の電力消費、ろ過材交換、餌代、人件費

魚を育てるのにコストがかかりすぎて、現実には採算ラインに乗っていないというのが現状です。

それでも参入が止まらない理由

1. 国の補助金が“参入リスク”を相殺してくれる

閉鎖循環式養殖は、国の「スマート水産業」「持続可能な養殖」政策と親和性が高く、各種補助金や事業再構築支援金の対象になります。
初期投資の3分の2~最大4分の3が補助されるケースもあり、「企業にとっては試して損なし」の状況が作られています。

2. SDGs対応の“広報素材”として有効

環境配慮・資源保全・食料安全保障──こうしたキーワードに合致するため、大企業にとっては企業価値の向上、投資家へのアピール材料となります。

つまり「実際に儲かるかどうか」ではなく、「なんとなく社会的に良さそうなことをやっているよね」という周りからの評価・実績作りが目的化しているのです。

3. 失敗しても“本業”には影響がない

製造業・IT企業・大手流通などが参入するケースでは、本業で潤沢なキャッシュフローがあるため、養殖事業が赤字でも致命傷にはなりません。
「研究開発扱い」「新規事業としての種まき」と割り切ることで、継続できてしまう構造があります。

4. ノウハウ獲得・将来的な技術転用の狙い

養殖を“食品”ではなく“データ”と捉え、水質制御や自動給餌、AI活用などに技術的関心を持つ企業もあります。
将来の海外展開やバイオ・ロボティクス技術の横展開を見越して、養殖を「未来投資」と位置づけている企業もあるのです。

 

では、これは健全な流れなのか?

閉鎖循環養殖そのものは、理論的には理想的なシステムです。
しかし現時点では、投資回収の見込みが立たない「補助金依存型ビジネス」であることが多く、養殖業全体を支える基盤にはなり得ないと考えています。

大企業がどんな理由で参入するにせよ、そこには膨大な補助金(税金)が投入されているという事実があります。そしてその投下資金は回収見込みなし。

現場で長年魚を育ててきた中小の養殖業者からすれば、
「結局、誰のための養殖か?」という疑問も湧きます。

本当に必要なのは、「自然の摂理とコスト感覚に合った持続可能な養殖」ではないでしょうか。
閉鎖循環型養殖の夢と現実──そのギャップを正しく見極めることが、今後の水産業の発展には不可欠だと考えています。